リモートワークでチームの生産性を高める:内向型・外向型に合わせた具体的な働き方
リモートワークが普及し、多様な働き方が可能になる一方で、チーム全体の生産性維持・向上に課題を感じている組織も少なくないようです。特に、メンバー一人ひとりの個性、中でも内向型と外向型の特性がリモートワーク環境下での生産性に影響を与えることは広く認識されています。人事部のマネージャーとして、チームメンバーの多様性を理解し、それぞれの個性が最大限に活かされる環境を整備することは、エンゲージメントや生産性の向上に不可欠です。
この記事では、内向型および外向型の特性がリモートワークでの生産性にどのように関わるかを分析し、それぞれの個性に合わせて生産性を高めるための具体的な働き方や、組織として支援できるアプローチについて考察します。
内向型と外向型の特性がリモートワークに与える影響
内向型と外向型は、エネルギーの源泉が異なるという点で対比されます。内向型は一人の時間や静かな環境でエネルギーを回復・チャージする傾向があり、深い思考や集中力を要する作業に適しています。一方で、外向型は他者との交流や活動的な環境からエネルギーを得やすく、活発なコミュニケーションや複数人での協働作業で本領を発揮することが多いです。
リモートワーク環境は、物理的に距離があるため、この個性の違いがより顕著に現れる場合があります。
- 内向型: 自宅など静かな環境での集中は得意とする人が多い一方、オンラインでのカジュアルな交流機会の減少により、孤立感を感じたり、自身の意見表明にハードルを感じたりすることがあります。また、突発的なオンラインミーティングや頻繁な通知は集中を妨げる要因となり得ます。
- 外向型: 通勤時間やオフィスでの偶発的な交流がなくなることで、エネルギーレベルが低下し、モチベーションの維持に苦労する場合があります。オンラインミーティングやチャットツールを積極的に活用しようとしますが、対面のような空気感を掴みにくく、コミュニケーションに物足りなさを感じることもあります。
これらの特性を理解せずに一律の働き方を強いると、個人の生産性が低下するだけでなく、チーム全体のエンゲージメントや心理的安全性にも影響が出かねません。
内向型メンバーの生産性を高めるリモートワーク戦略
内向型メンバーがリモートワークでその強みを発揮し、生産的に働くためには、彼らが集中できる環境と、プレッシャーなくコミュニケーションできる機会を提供することが重要です。
- 集中できる環境構築の推奨:
- 物理的環境: 作業スペースを物理的に区切る、ノイズキャンセリング機能付きヘッドホンの活用などを推奨します。背景ノイズが気になる場合は、バーチャル背景の使用も有効です。
- デジタル環境: 集中を妨げる通知をオフにする、特定の時間帯はステータスを「集中モード」にするなどの設定を促します。
- 効果的なコミュニケーションの設計:
- 非同期コミュニケーションの活用: レポートや提案は、事前にドキュメントで共有することを基本とします。これにより、内向型メンバーはじっくり考えてから質の高いアウトプットを出すことができます。
- 会議形式の工夫: アジェンダを事前に共有し、発言する機会を均等に設ける、チャットでの質問や意見表明を歓迎するなど、一方的な情報伝達に終始しない工夫が必要です。ブレイクアウトルームを活用し、少人数での対話の機会を設けることも有効です。
- 1on1の重視: 定期的な1on1で、個別の状況や懸念を丁寧にヒアリングする時間を設けます。これにより、チームミーティングでは発言しにくい内容も安心して伝えられるようになります。
- タスク管理と時間管理の支援:
- 深い集中時間の確保: ポモドーロテクニックやタイムブロッキングなど、集中時間を区切り、計画的に休憩を取る手法の導入を推奨します。
- マルチタスクの軽減: 同時に複数のタスクを振るのではなく、一つ一つのタスクに集中できるようなアサインメントや期日設定を検討します。
外向型メンバーの生産性を高めるリモートワーク戦略
外向型メンバーがリモートワークで活力を維持し、生産的に働くためには、他者との適切な交流機会と、そのエネルギーを仕事に繋げられる仕組みを提供することが助けになります。
- 交流機会の創出と促進:
- オンラインでの偶発的な交流: バーチャルオフィスツールや、常時接続されている休憩用オンラインルームなどを試験的に導入することで、オフィスでの偶発的な会話に近い機会を設けることができます。
- 意図的な交流イベント: 短時間のオンラインコーヒーブレイク、ランチ会、業務とは直接関係ないオンラインイベント(部活動など)を企画し、参加を促します。ただし、強制参加としないことが重要です。
- 積極的な発信の推奨: チャットツールなどで、業務に関する情報だけでなく、簡単な近況や雑談などを発信することを推奨します。
- 協働作業とチームワークの促進:
- 共同作業ツールの活用: オンラインホワイトボード(Miro, Muralなど)や共同編集ドキュメントを活用し、複数のメンバーが同時にアイデアを出し合ったり、作業を進めたりする機会を増やします。
- ペアプログラミングやモブプログラミング: 技術系のチームであれば、オンラインでのペアプログラミングやモブプログラミングを取り入れることで、継続的なコミュニケーションと協働作業を促進できます。
- エネルギーレベルを維持する工夫:
- 定期的な短い休憩: 集中力が途切れたと感じたら、意識的に短い休憩を取り、席を離れる、軽く体を動かす、同僚と短いオンラインチャットをするなどを推奨します。
- 適度な刺激のある環境: 自宅以外(サテライトオフィス、コワーキングスペースなど)での勤務を許可・推奨することも、環境の変化による刺激となり得ます。
組織として多様な働き方を支援するために
人事部マネージャーとして、これらの個性に合わせた働き方をチーム全体で支援するためには、以下の点が考えられます。
- 柔軟なルールの設定と共有: コミュニケーションツールにおける通知設定の推奨、会議への参加方法(カメラオン/オフの選択肢)、非同期コミュニケーションの活用方法など、画一的でない柔軟なルールやガイドラインを設け、チーム内で共有します。
- 個性の理解促進: チームメンバーが自身の、そして他者の個性の違いを理解するためのワークショップや研修を実施します。ストレングスファインダーやMBTIなどのツールを活用することも一案です。(ただし、これらのツールへの過度な依存や類型化には注意が必要です。)
- 多様なフィードバックと承認: 成果に対するフィードバックや貢献への承認も、個人の好みに合わせて多様な方法を用意します。例えば、内向型には文書での丁寧なフィードバック、外向型にはオープンな場での称賛が響く場合があります。ただし、これも一方的な決めつけではなく、本人の希望を考慮することが重要です。
- 心理的安全性の確保: どんな働き方やコミュニケーションスタイルであっても、チーム内で安心して受け入れられる文化を醸成します。「内向的だから」とか「外向的だから」といった理由で不利益を被ることがないよう、公平な評価制度や評価プロセスを確立します。定期的なアンケートやヒアリングを通じて、メンバーの懸念やニーズを把握し、改善に繋げます。
まとめ
リモートワーク環境下でのチームの生産性向上は、単にツールや効率化の手法を導入するだけでなく、メンバー一人ひとりの個性、特に内向型と外向型の違いを深く理解し、それぞれの特性が活かされるような働き方や環境を支援することから始まります。
人事部マネージャーとして、この多様性を受け入れ、柔軟なルール設定、個性の理解促進、多様なコミュニケーション・フィードバック手法の導入などを通じて、メンバーが自分らしいスタイルで最大のパフォーマンスを発揮できるような環境を整備することが求められます。個々の生産性向上は、結果としてチーム全体のエンゲージメントと生産性の向上に繋がるでしょう。